ヘタではない
2008年04月11日
3-3 (aet) Getafe CF vs. Bayern Munich UEFA Cup - MyVideo
UEFA杯ベスト8セカンドレグ、ヘタフェは欧州の強豪バイエルン・ミュンヘンと3対3の引き分けに終わり、アウェーゴールから夢物語に終止符が打たれた。
リーガに初参戦したころのようにスタジアムが満員となっただけでなく、VIP席にはフアン・カルロス国王が駆けつけるなど、マドリー郊外の小さなクラブはベッドタウンの人々だけでなく、スペイン国中から熱い後押しを受け、「ヘタフェなどどこにあるのか、誰がいるのか全くわからない」と高慢に振舞ったバイエルンに一泡を吹かせようとしていた。
この日、空はあいにくの雨模様。晴れ晴れとしたイメージの強いスペインだけに、雨雲に覆われたもとで行なわれる試合は、決して縁起の良いものには思えなかった。そして、現実にヘタフェの進む道は茨の道となった。
開始わずか5分、デ・ラ・レッドがクローゼを倒したことからまさかのレッドカード一発退場。今シーズンのチームの象徴と言える元マドリーの選手がまずピッチから姿を消してしまった。
3大会を戦い続けていることで、けが人が続出し、苦しい台所事情のヘタフェ。デ・ラ・レッドは空中戦の強さから怪我明けのキャプテンベレンゲルに代わり、長身FWルカ・トニ対策としてCBで起用されていたが、この退場でチームのゲームプランは大幅の見直しを余儀なくされる。
さらに、20分には攻撃のキープレーヤーであるFWウチェが再び足を痛めてしまい、バルセロナ戦のパブロ・エルナンデス、マリオ同様にピッチを後にするなど、UEFA杯だけでなく、リーガ、国王杯を見据えた上でも厳しい状況に追い込まれた。
一人多いバイエルンは、数的有利もあり、しっかりとしたパス回しからヘタフェの守備を崩そうとするが、一人少ないことから守備の意識が高いヘタフェから決定的な形を作れずにいる。マドリーのチームは専守防衛、亀のように身を縮めているのではなく、時よりカウンターアタックで応戦。
そして、42分、自陣右サイドでパスをもらった前回のヒーロー、コントラが右サイドを駆け上がり、DF2人を強引な突破で抜きさり、カーンが見送るだけの強烈な一発をネットに突き刺す。歓喜が爆発するスタジアム。ハンディキャップを背負う、どこの国のどこの町にあるかわからないヘタフェが、ヨーロッパだけでなく世界中に名を知らしめるビッグクラブから先制点を奪った意味はとても大きなものだった。
後半、後のないバイエルン。怒涛の攻撃を見せ、ネットを揺らすも、ファールがあり、ゴールは取り消される。前半と変わらぬ様相の試合展開だが、疲労の色は隠すことが出来ずに、ルカ・トニの頭を狙ったバイエルンのパワープレーに徐々に押し込まれていくヘタフェ。
だが、再びカウンターから決定的なチャンスをヘタフェは作り出す。68分、左サイドからカウンターを仕掛けたヘタフェ。ボールは中央のブラウリオに渡り、GKカーンを抜き、あとは右足を振りぬくだけで準決勝進出の切符は手元に届けられ、スタジアムの誰もがゴールへの喜びを爆発させる準備をしていたが、降りそそぐ雨のためにぬかるんだピッチに足を取られてしまいシュートを打つことができなかった。
ここで決めていれば終わっていた試合だった。だが、神様はヘタフェに試練を与えることを望んでいるようだった。試合終盤86分には、カウンターからガビランがDFを交わし、カーンと1対1となりとめられるものの、ボールは再びバレンシアカンテラーノの元に。後ろにはブラウリオが詰め、ガビランがヒールでパスを送るが、DFが必死に伸ばした足にボールは弾かれてしまう。
決定的チャンスを2度逃したヘタフェ。だが、時計の針は刻々と試合終了を告げる為に動いていた。だが、相手はあのバイエルン。気持ちの弱いスペインのチームならまだしも、ゲルマン魂の塊を体現するチームだ。そして、89分。パワープレーからリベリーが豪快に右足をふり抜き、3度目の正直と言わんばかりに同点ゴールを決める。
延長戦。疲労が蓄積されている上、一人少ないことからゴールというポジティブなイメージは見えなかったヘタフェだが、それは間違いだった。笛が吹かれて1分、左サイドでゲームを作り、カスケロが中央でフリーの状態でワントラップし、ボールをシュートの出来るところに置き換え、右足をふりぬくと、ボールはカーンをあざ笑うかのようにポストに当たり逆サイドのネットへと転がり込む。
待望の追加点。だがこれだけではない。わずか1分後、今度は右サイドのカウンターからブラウリオが粘って、ボールを奪い返し、ゴールエリア右45度からカーンの牙城を崩す。3対1。試合は決まったと素直に思えた。バイエルンの選手たちの気持ちも切れているのが見て取れた。だが、114分にパトが致命的なミスを犯してしまう。
昨シーズンのリーガNO1であるアルゼンチン代表GKがまさかのファンブル。このミスを狡猾なイタリア人FWが見逃すことなく1点差に。更に試合終了1分前、GKカーンが前線に上がりラストチャンスに賭ける。ボールはそのカーンのもとに届き、GKはヘタフェの選手にプッシングのファールを犯すも、主審はそれをとらずにプレーを続けることに。そして左サイドから上げられたクロスにルカ・トニが頭で合わせて、まさかの同点劇を起きてしまった。
けが人がいなければ、デ・ラ・レッドが退場でなければ、第1戦のマヌのシュートがポストを叩かなければ…たら、ればを言えばきりはない。現実問題としてヘタフェのヨーロッパでの戦いが一番残酷な形で終わってしまった。2戦を通して4対4の引き分け、CLの常連、しかも上位進出の常連であるバイエルン相手に負けることなく姿を消すことになった。試合後フィツフェルトは、素直にヘタフェがバイエルンより良いプレーをしていたことを認め、バイエルン広報は国王杯での優勝を期待するとエールを送った。
ヘタフェはスペインのマドリー郊外にある小さなチーム。チーム予算もJリーグと大きな差がないチーム。だが、日本語のようなヘタなチームでは決してない。サポーターが選手たちに誇りを持ち、「ヘータ、ヘータ」とコールを贈り続けるチームだ。今はただ、夢を見させてくれているこのチームが、来週の国王杯で優勝というタイトルを取り、夢を現実にすることを期待している。
